shamrock 2 北アイルランドバスツアー4 <8月26日>




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行程 : ベルファスト(ブラックキャブツアー)→ダブリン

 本ツアーのガイドさんはベルファストのプロテスタント地区の生まれで、イギリスの大学で政治学を学んだそうだ。そのため特に北アイルランド問題と政治・経済的側面との関係について非常に詳しく、かつ語りが篤い(熱い)。しゃべり始めるとだんだん口調が早くなり、目が真剣になる。そして、心から北アイルランドの平和を願っていることが伺える。こういう人達を見ていると、北アイルランドに真の平和が訪れるのもそう遠くないと思いたい。ただ一方で、未だにカトリックとプロテスタントとの対立(正しくはナショナリスト=リパブリカンとユニオニスト=ロイヤリストの対立言うべきか)の火種は消えておらず、くすぶり続けているようにも思う。

 4日目はそんなベルファストの悲しくも虚しい闘争の爪痕をたどるブラックキャブツアーから始まった。問題の舞台となっている Shankill Road は、意外なくらいにYHから近いところにあった。
 

ロイヤリストの集落

アートも怖いが、たなびくイギリス国旗がもっと怖い
 北アイルランドの問題*については非常に繊細でかつ複雑な上に、タクシーのガイドが話している言葉がほとんど聞き取れなかったため、以後は写真を淡々と載せたいと思う。とにかくキャブツアーを通して陽気になれない雰囲気が立ちこめており、個人的には見てはいけないものを見てしまったときに感じる、変な罪悪感を覚えた。

 一つ気になったのは、ツアーの最後に立ち寄ったシンフェインの事務所のような建物で売っている本が市場より2割くらい高かったことと、そこに何故かPat Murphyさんのセットダンス教本である「Toss the Feathers」も売っていたこと。何だろう、アイリッシュ・カトリックっぽさを表象する本の一つだということだろうか。

 個々の絵そのものは丁寧で上手だ
 

イギリスでは英雄、アイルランドでは
悪の権化のクロムウェル氏

 壁を挟んで向こう側はカトリックの居住区、
こちら側はプロテスタントの居住区。
かつて争いが絶えなかった場所

 

壁の反対側にあるカトリック集落。
紛争で命を落とした方々の名前が記されている。
この付近でも壁の向こうから飛んできたプラスチック
爆弾で亡くなった方がいるらしい。

 ハンストで命を絶ったボビー・サンズの
自由を願う詩が刻まれている
 ツアーは90分程度で終了し、一行はバスに戻りベルファストを後にした。正直、この日はそれ以降はどうでもよくなるくらい、初っぱなで疲れてしまった。

 バスは大学通りを過ぎ、やがてベルファストを去り、北アイルランド内最後の見所である4000年前の墓、Legananny Dolmenに向かった。ビューポイント毎に歴史の舞台となった時代がころころ変わるため、頭を切り換えるのが難しい。ドルメンはまあ「ああ、ドルメンだなあ」という感想であったが、それよりもドルメンのビジターセンター入り口で子供たちがステップダンスの練習をしていたのが印象的だった。日本人がビルの裏とかでブレークダンスの練習をするような感じだろうか(違うと思う)。

 ツアーはまもなく終わりに近づいていたが、個人的には正直、やっと部屋を専有して、服を洗って、ゆっくりシャワーを浴びることができる嬉しさでほっとしていた。
 少し走るとバスはまた何の予見も抵抗もなく国境を通過する。ベルファストのプロテスタント居住区とカトリック居住区を隔てる門は、開いてはいたがまたいつ閉めても良いように取り壊していない(もしかしてまだ使うこともある??)のとは対照的であった。

Legananny Dolmen

 Monasterboice
 そしてドロヘダ(Drogheda)付近のモナスターボイスへ。かつて、アイルランドが最も宗教的に輝かしかった時代の修道院跡である。ここに来たのも2度目だったので、写真を撮りつつさらっと通り過ぎた。後に4年前に来たときの写真と今の写真を見返して、2つのカメラアングルがそっくりで驚いた。人間はあまり変化しない生き物である。

おなじみ円塔とハイ・クロス

 そしてバスはダブリン市内へ。何十時間ものリスニングレッスンからやっと解放された感じだったが、ツアーのことは結構良い想い出になっている。もう少し英語が堪能になったら、また是非同じツアーに参加してみたい、と強く感じた。

 その日の夜はO'Shea'sというホテルに泊まった。そのパブで毎週木曜にセットダンスケーリーをやっているからだが、それ以外にも値段、立地条件、設備等を考えると文句の付けようのないホテルだった。
 セットダンスケーリーでは、そこで出会ったJimさんのおかげもあり、6セット中4セットも参加させてもらった。またデリーに引き続き、何がきっかけだったのかは忘れたが、ここでもミュージシャンから「今日は東京からゲストが来ています。キヨ!」とコールされ、理由なく拍手を浴びた。ダブリンのど真ん中のパブではこういう交流は無いと思っていただけに、嬉しかった。このダンスケーリーをきっかけに、翌日から4日連続ダンス三昧の日々を送ることになった。

* 北アイルランドの諸問題については、先ほどあげた「抵抗の国・アイルランド/北アイルランド問題資料室」「エールスクエア」の他、丸善ライブラリー「アイルランド問題とは何か」など各種書籍を参照のこと。いずれにせよ、旧スコットランド系とアイルランド系とはいえ、同じケルトの血を引く2つのグループがお互い血を流しあっているのが余計に虚しさを覚える。
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