The ROUNDSTONE インタビュー


訪問日:2005年10月22日(土)



そんなわけで始まったアイリッシュパブへの訪問&インタビュー企画。本当は偶発性の強い企画(ノンアポ)にしようとも思っていましたが、それだといつものパブ訪問ブログとかとあんまり変わらないと思いましたので、ちゃんと時間を取ってインタビューさせていただくことにしました。

その第一段は先日5周年を迎えた天王洲アイルにあるパブ"The ROUNDSTONE(ザ・ラウンドストーン)"です。

このパブ、内装はある種現地以上にアイリッシュパブっぽい雰囲気なんですだけどばりばりオフィス街にあるという"仕事とレジャーの不思議な位置関係"が前から気になっていました。その辺も是非聞いてみようと思いつつ、土曜の昼下がりに天王洲アイルへ・・・

The ROUNDSTONE 基本情報



住所 東京都品川区東品川2-3-10 シーフォートスクエア2F
最寄り駅 天王洲アイル(モノレール or 臨海副都心線)
TEL/FAX 03-5796-2848
営業時間 平日(月〜金曜) 11:30〜23:00(Closed 15:00〜17:00)
土曜 11:30〜22:00
日曜・祝祭日 15:00〜22:00
年中無休
URL http://www.avalon-intl.co.jp/roundstone/

 
店長さんインタビュー

〜 ラウンドストーン店長の一色さん、アバロン・インターナショナルの大平さん
へのロング・インタビュー 〜
一:一色さん、大:大平さん

− まずは5周年おめでとうございます。早速ですが、(当日はいらっしゃいませんでしたが)、現オーナーの小松さんがアイリッシュパブを作ろうとした最初のきっかけを教えてください。
大: オーナーの小松が大学時代にアイルランドに行き、そこで1年ほど過ごしたときにお世話になった人やパブにたいへん感動を受け、将来アイルランドに恩返しをしたいと思ったのが始まりで、その後ハルモニアを興し、ロックサンタ事業で得た利益でシャノンズ(大崎)を作ったそうです。
− え?ロックサンタってあのロックサンタですか?
大: あのロックサンタです。
− それは知りませんでした。踊るサンタがアイリッシュパブを建てさせたんですねー。
   ところでここのアイリッシュパブの客層としてはどういった方が多いでしょうか?
一: どちらかというと近隣会社員の立ち寄る居酒屋のような雰囲気を持っていますね。主に30代〜40代の会社員の方が中心です。
− 近くに外資系企業がありますが、外人の方は多いですか?
一: 外人の方も結構いらっしゃいますよ。バーテンダーもアイリッシュですので、気軽に話しかけ易い環境になっています。
− 先日前のアイリッシュのバーテンダーが帰国されたと伺いましたが、新しい方もアイリッシュなんですか?
大: はい。オーナーの方針でバーテンダーはアイリッシュを雇っています。
本物のアイリッシュ・イングリッシュを体験したいなら、カウンターに座って是非バーテンダーと話していただきたいと思います。なかなか聞き取るのが大変ですが・・・。
店内は広く、喧噪から離れてゆっくり
座って飲める席もある
暖炉の中は調度品でぎっしり
ちょっと詰め込みすぎのような気が・・・
− (私みたいに)独りで立ち飲みとかで来るお客様もいらっしゃいますか?
一: いらっしゃいますね。カウンター席も用意していますし。また特にこれというスタイルを設けていませんので、もちろん立ち飲みも歓迎です。
− それは心強いですね。最近は自由に歩き回れないパブとかもありますし・・・
大: 店が広いこともあってイス席も多く設けていますが、パブの良さはやはりバーカウンターに有ると思っていますので、カウンターに座ってお隣のお客さんや店員さんに気軽に話しかけていただければと。
一: 店員さんには気軽に話していただきたいですね。要望とかも色々挙げていただければ、結構できちゃうこともあるかも知れません。現に常連アメリカンのお客様の注文でバーガーを作っていたら、それが好評になりメニュー化したりもしていますし。
− 面白いエピソードですね。
大: また一人でカウンターに座るお客様のために、"Irish Times"のフロントページも置いてあります。3日に1回ほど更新させていただいているので、読みに来てください。


カウンター席は席数は少ないが、店内が見渡せる

− ところで逆に会社帰りの方が多いということは、土日は大変じゃないですか。
一: そうですね。立地上土日はお客様の入りが悪いですね。でも土日に来たいという人が増えてもらえるような事をやっていきたいんですよ。今はミュージックライブを定期的にやっていますけど、他にもアイルランドと日本の交流に繋がるような企画を立てていきたいです。
− 土日は天王洲アイル全体が静かですからね。
一: 土日に来るお客様って、ここに来るためだけにいらっしゃるので、そういう方のためのもてなしができればと思っています。
大: 他が静かだけどここだけ盛り上がっているという空間が作れれば嬉しいですね。
− 9月の5周年記念イベントの時はそんな感じでしたね。
大: まさにそうですね。あの時は土砂降りで雷まで鳴ってどうなることかと思いましたが、パブの中だけは凄い熱気でした。終わる頃には雨も静まって良かったです。

アイリッシュパブといえばお酒と雰囲気かと思っていましたが、日本のパブの場合+αが必要なのかも。。このパブの「売り」を伺ったところ、意外な回答が返ってきました。

− 話は変わりますがこのお店の売りとか、特に力を入れているものって何でしょう?
一: 「Irish Pub & Restaurant」と銘打っているとおり、お酒だけでなく料理には力を入れていますね。アイルランドの家庭的な料理の味・雰囲気を提供したいと思い、色々工夫しています。ただ手に入る食材が少なく、料理の情報も少ないのが難点ですね。
またお客様の8割は日本人ですので、日本人の口に合うアイリッシュ料理を作るのが難しいところです。
− アイリッシュの料理を日本人が作ると、本場よりおいし過ぎちゃうんですよね。個人的には日本人が作るアイルランド料理の方が好きです。
一: アイリッシュの素材や作り方を取り入れつつ日本人に合う料理を出すよう努力しています。
ちなみにこの冬は新しいメニューとして、ラムを使ったシチューと、ムール貝を使ったシーフードシチューを出す予定ですので、是非召し上がってみてください。
大: またサイダーや輸入ビールにも力を入れています。フィニアンズ、ビディー、オハラズなどは地元の工場直で取り入れていますし、ビディはアイルランドでもアイナ村でしか飲めないビールです。ビディブロンドは日本人の口にも合うようで人気がありますね。

サイダーもマグナーズはじめ数種取りそろえていますが、まだ日本ではシードルという言い方の方がメジャーで、サイダー自体知っている方も少ないですね。アイリッシュ・パブが浸透したといってもそういう点ではまだまだこれからだと思っています。
− マグナーズやビディは、アイルランドで卸されているニチアイの高木さんからも伺ったことがあります。
  日本でもっと広めたいのでどんどん飲んでください、って言われました(笑)
一: またウィスキーの品揃えにもこだわりを持っています。(インタビュアー注・20種類以上の品揃えが有ったと思われます)
この辺はギネスだけではないアイルランドの文化を紹介したいという小松の思いがあります。
− ウィスキーが多いと利き酒とかできて楽しいですよね。
一: 実はあるんですよ、利き酒セット。少量のウィスキーを3種類程度出す(800円〜1200円)というメニューがあります。
大: 蒸留所シリーズやメジャーウィスキーシリーズ等、利き酒セットメニューをいくつか用意してありますので、是非試してください。
− おお、そんなのあるの知りませんでした。隠れメニューですねえ。
大: 過去絶版になったようなお酒もできる限り集めたりと、こういうところにもこだわりを持ってやってます。
飲みながら調理風景が見られる
カウンターに奥はウィスキー、
左の筒には"Irish Times"のコピーが

予想以上に心地よいテンポで質疑応答は続き、思わぬロングインタビューに・・・

− 店長さん自身ラウンドストーンについて思い出に残っているエピソードなど有りましたら教えてください。
一: 挙げたら数限りなくありますねー。
元々シャノンズでのバイトから入ったのですが、その後ラウンドストーンを開設するにあたって、ここにまだ何もない状態から携わりました。アイルランドから大量の段ボール一杯に届いたアンティークを一から取り付けたりしている中で、このパブに対する思い入れが強くなっていきました。

エピソードと言えば、開店一年後に大掃除していたら、シャムロックの飾りポットから鳥の巣が見つかったときにはびっくりしました。アイルランドから持ち運んだまま一年保管されていたんでしょうね。
大: 調度品も日本の大手業者発注じゃなく自己調達してるので、オーナーの思いやこだわりが入ってます。
− 確かに、見渡してみると多いですねー。
一: 是非いらっしゃった方には一個一個の調度品も見て貰いたいです。手製の洗濯板なんかは、アイリッシュの方が来て懐かしがってました。まだ今でもアイルランドの田舎ではおばあちゃんが使っているんだそうです。

あと何気なく飾っている本にも、歴史的見地からも重要なモノがあるそうです。そういった本や調度品も実際に手にとって見ていただければと思います。
大: 調度品も日本の大手業者発注じゃなく自己調達してるので、オーナーの思いやこだわりが入ってます。

あちこちに拘りの調度品が飾られている

− では、お客様にパブとしての楽しみ方とか、パブとして今後どういうふうにお客様を楽しませていきたいみたいなものがあれば教えてください。
一: 安い居酒屋ほどチープではなく、クラブほど敷居が高くもない、程良くおしゃれだけど高過ぎもない店として、30代〜40代の方にうけているのかな、と思います。これからも珍しくて美味しいものが気軽な感覚で食べて飲める店として、気軽にお越し頂きたいです。

また間口を広げていきたいと思っています。日本の居酒屋のようでもあるけど、一方でアイルランドの音楽・文化イベントや珍しい料理・ウィスキーなどを品揃えたアイルランド文化の発信地でもある、みたいな場所にしていきたいですね。
− アイルランド文化の話が出ましたが、Heathery Breeze等の定期ミュージックセッション以外にアイルランド文化発祥のアイディアとして何か考えているモノはありますか?
一: 本当は音楽に限らず、サッカー、ダンス、映画、文学など、色んなアングルからアイルランドを紹介することができればいいな、と思っています。もちろん伝統だけではなく、今のアイルランドも紹介していきたい。もちろん、映画は版権の問題があったり、ビジネス上の難しさもあるので段階的になるとは思いますが・・・。

あと土日であれば、アイリッシュダンスや笛なんかの教室の場として提供したり、留学説明会に使って頂いたりといった、アイルランド関連の発表会やイベントのための場をお貸しすることはこちらも大歓迎です。
大: 先日も安井さんの笛の教室として提供させていただきました。ビール付きの教室ということで、みなさんとても楽しそうでした。
またアイリッシュダンスの発表会なんかも開催しています。
一: 以前、お客さんたちが集まって、ラフカディオ・ハーンの勉強会をやったこともあります。その時はハーンさんのお孫さん(インタビュアー注:小泉凡さん)もいらしてました。こういったアイルランド関連の集まりとしても使ってもらえたらいいと思います。
− ちなみに、土曜や日曜午後とかにアイリッシュダンスのセッションとか開催しても宜しいですか?
大: 是非やってください。ここは下にも響きませんし、広さもありますから。特に土日は多少騒いでもOKです。
一: ただしバグパイプを使われるときだけは、周囲に色々お話ししないと行けませんので前もって仰ってください(笑)
大: また小さい規模のちょっとした集まりであってもOKですので、何かやりたいことがありましたら気軽に声を掛けてください。
− それは良いことを聞きました。是非いつか利用させてください。パイプだけは注意しますんで。
  今日はお忙しい中本当にありがとうございました!!



−感想&後記−

予定時間を超える1時間以上のロング・インタビューにも関わらず、最後まで熱心に、真剣に語ってくれたお二人に感謝!上記だけでは語り尽くせない色んな思いを聞くことができました。その強い思いを少しでも伝えられれば、と思いつつ原稿を起こしました。

調度品については確かに言われて周りを見渡すと、色んなモノが置いてあって楽しいです。暖炉の中なんて、そこまで詰め込まなくても、というくらい置いてあります。そんなところに楽しみを見つけるのも良いかも。
あとは願わくば立ち席やカウンター席をもう少し増やして欲しいなあ、という思いもありますが、これはまあしょうがないですね。Roundstoneに行くとなかなか立ち席にして頂きづらかったのですが、今後は晴れて立ち飲みしたいと思います。あ、あときっと近いうち踊らせてもらいに行きたいです・・・。

正直土日に行くにはちょっと立地条件が厳しい場所だけに、それでも行きたい、と思わせる工夫が今後の課題でしょうか。これからもアイルランドへの愛情を持ち続け、料理やイベントへのアイディアを提供していただければ、とせつに願います。

ということで、アイリッシュパブインタビュー企画第一回目はラウンドストーンにおじゃましました。
(2005年11月)

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